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[NPT再検討会議2022] 被爆地への言及相次ぐ 一般討論演説

「悲惨さ 思い起こす場」 「投下 開発加速させた」

 米ニューヨークの国連本部で4日まであった核拡散防止条約(NPT)再検討会議の一般討論演説で、原爆の日を前に「ヒロシマ」「ナガサキ」への言及が相次いだ。核兵器を巡る情勢が厳しさを増す中、国際社会にとって被爆地は「核兵器のない世界」を目指す原点であり続ける。(ニューヨーク発 小林可奈)

 「数日後に開かれる広島、長崎の原爆犠牲者追悼式は、核兵器の使用が人道上いかに悲惨な結果をもたらすか、強く思い起こさせてくれる」。3日に演説したキプロスの代表は、こう力を込め、再検討会議の成功へ力を尽くすよう出席者に呼びかけた。

 「広島と長崎で起きたことは、核開発競争を止めるどころか加速させた」と指摘したのはパレスチナの代表。事実上の保有国イスラエルとの紛争が続くだけに、核兵器廃絶の必要性を説き「犠牲者の思い出と生存者の苦しみが、恐怖や非人道性の方向とは違う賢明な道へ私たちを導いてくれますように」と演説を締めくくった。

 再検討会議は近年、春にあるが、今回は新型コロナウイルスの流行を受けて2020年春の開催予定が4度延期され、今月1~26日の異例の日程になった。広島、長崎の原爆の日を含むだけに、各国とも演説で一層意識したようだ。

 ローマ教皇庁(バチカン)の代表も、教皇フランシスコが19年の広島訪問時に発した「戦争のために原子力を使用することは、犯罪以外の何ものでもない」とのメッセージを紹介。ドイツのベーアボック外相は長崎で被爆証言を聞いた経験を紹介し、核軍縮の誠実な交渉などを義務付けたNPTの原則を守ることを「緊急課題」と訴えた。

 1日からあった一般討論演説は、約130の国・地域やグループの代表が登壇した。予定より半日早く終えたため、第1委員会(核軍縮)の日程を前倒し、4日午後から討議に入った。

(2022年8月6日朝刊掲載)

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