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不戦の誓い 備後でも 平和集会や慰霊式典 「為政者の誤った判断 多くの命奪った」

 広島に原爆が投下されて77年となる6日、備後地方の各地で慰霊式典が営まれた。府中市上下町では地元住民企画で2年ぶりの平和集会があり、福山市や尾道市、三原市でも犠牲者を追悼する催しを開催。ロシアのウクライナ侵攻を受けて核兵器使用の懸念が高まる中、不戦の誓いを新たにした。

 府中市上下町矢多田の折鶴館では、被爆者の坂田尚也さん(92)=三次市三和町=が住民たち約15人を前に講演した。15歳の時に江波町(現広島市中区)にある動員先の三菱重工業広島造船所で被爆。川を流れる遺体や性別も分からないほど全身が黒焦げの人たちを目撃し「まさに地獄絵図だった」と証言。「為政者による誤った判断が多くの命を奪った」と反戦を訴えた。

 参加者は、約10万羽の折り鶴が飾られた館内を見学。灯籠に火をともし、犠牲者に黙とうをささげた。呼び掛け人代表で上下町の野田明子さん(81)は「みんなで集まり、平和の尊さを改めて実感した」と話した。

 三原市原爆被害者之会は、同市本町の慰霊碑前で式典を開催。被爆者や遺族たち約45人が集まり犠牲者を悼んだ。新型コロナウイルス感染拡大防止のため式典の内容を大幅に縮小し黙とうと献花にとどめた。死没者名簿には13人が加わり、計584人になった。

 苞山(ほうやま)正男会長(93)は、プーチン大統領による「核の脅し」などに触れ「戦争の時代は地獄。広島の悲劇を二度と繰り返してはいけない」と危機感をあらわにした。

 福山市原爆被害者友の会は市中央公園で式典を開き、遺族や盈進高生たち約60人が参列。兄が爆心地から約800メートルの地点で被爆した大目勤さん(85)=同市津之郷町=は「全身が包帯で巻かれて福山に帰ってきた兄の姿が忘れられない。戦争も核兵器もいりません」と手を合わせていた。

 尾道地区原爆被害者の会は、尾道市東尾道の慰霊碑前で式典を開き、約30人が参列。被爆2世で同市久保町の畑山利一会長(71)は「世界では争いが続き、平和と逆行する動きが進む。あの日の悲しみに思いをはせよう」とあいさつした。

(2022年8月7日朝刊掲載)

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