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「先制不使用」約束を 国連総長 初の言及 被爆地との連帯誓う ヒロシマ8・6

 6日、広島市の平和記念式典に初参列した国連のグテレス事務総長。「核兵器は愚かだ」「被爆者の声を聞け」―。ウクライナ危機に揺れる世界へ、力強いメッセージを発した。被爆者や被爆地のトップとも対面し、「核なき世界」の実現に向けた連帯を誓った。(田中美千子、筒井晴信、湯浅梨奈)

 式典あいさつでは、核兵器保有国を「実弾が込められた銃で遊んでいる」と指弾するなど、踏み込んだ表現が目立った。核保有国に「先制不使用」を約束するよう提言。関係者によると、事務総長の呼びかけとしては初めてだという。

 被爆者5人との対面では報道陣にも公開された冒頭、こう切り出した。「連帯の気持ちを示したくて来ました」。家族を奪われ、古里を破壊され、後障害に苦しめられる被爆者たち。グテレス氏は、その声を忘れないことが「核兵器がみたび使われない唯一の保証だ」と強調。日本語で「ありがとう」とねぎらった。

 参加した篠田恵さん(90)=中区=によると、グテレス氏は非公開の場で「被爆者の体験や思いを必ず引き継いでいく」と語ったという。「いつまで証言活動ができるか不安だったが、私も頑張らないと。そんな思いになりました」

 内藤慎吾さん(83)=南区=も「核廃絶への本気度を感じた」と言う。自身は原爆に家族5人を奪われ、唯一共に生き抜いた母まで8年後に病で亡くした体験を吐露。国連で拒否権を行使できる常任理事国が核保有国で占められる現状についても問題提起したという。「グテレスさんも課題と感じているようだった。『それでも根気強くやる』と誓ってくれた」と明かした。

 グテレス氏は松井一実市長、広島県の湯崎英彦知事とも相次ぎ懇談し、核廃絶に向けて歩調を合わせることを確認。広島市からは特別名誉市民の称号が贈られた。国連の次期目標に核兵器廃絶を盛り込むことを目指す県の取り組みにも賛意を示したという。

(2022年8月7日朝刊掲載)

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