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核使用の危機 強く認識 各国大使ら 緊迫の国際情勢反映

 広島市中区の平和記念公園で6日にあった平和記念式典に、99カ国と欧州連合(EU)代表が出席した。ロシアによるウクライナ侵攻で核兵器使用が懸念される中、核の惨禍を体験した被爆地に立った大使たちは、悲劇を繰り返すまいとの思いを新たにした。

 「原爆の惨禍を伝える写真を目にし、体験証言に耳を傾けるたび、今起きたことのように思わせられる」。ギニアのムッサ・ファンタ・カマラ臨時代理大使は「私たちが広島に来ることは、戦争と核兵器の推進者への抵抗に等しい」と意義を語った。オランダのペーター・ファン・デル・フリート大使も「この地で感じる破壊と悲劇は、核兵器を議論する原点」とした。

 核兵器使用の危険性が高いとの認識は共通する。クロアチアのドラジェン・フラスティッチ大使は「一線を越えないと信じるが…」。イラクのアブドゥル・カリーム・カアブ大使は「保有国が決して使うことはない、とは思わない」と語る。

 ではどうするか。「核保有国は不使用を約束すべきだ」と求めたのはベトナムのヴー・ホン・ナム大使。同国が加盟する核兵器禁止条約の意義を語る。核保有国である英国のヘレン・スミス首席公使は「核戦争は決してしてはならない」としたが、あくまで核拡散防止条約(NPT)に依拠した核軍縮を強調した。

 国際情勢の緊迫は式典の顔ぶれにも影響した。核保有9カ国のうち出席は米国、フランス、イスラエルを含む4カ国で、昨年から3カ国減った。ロシアは広島市から招待されなかった。(金崎由美、宮野史康、湯浅梨奈)

ロシア 世界平和の脅威 ウクライナ公使参事官 指弾

 ウクライナのオレクサンドル・セメニューク公使参事官は6日、広島市中区であった平和記念式典に参列後、中区のホテルで中国新聞の単独取材に応じた。ロシアのプーチン大統領のような「無責任な指導者の手に核兵器があるのは非常に危うい」と述べ、核なき世界に向けた日本の取り組みを支持すると語った。

 セメニューク氏は、プーチン大統領を「プーチン」と呼び捨てにした。「核兵器で世界を脅した。ロシアは世界の平和と安全への最大の脅威だ」と指弾した。

 式典参列に先立ち、5日には原爆資料館(中区)を訪れた。「強く心が動かされた」と印象を語り、「資料館の外に出て夏の緑と行き交う人々の姿を見た瞬間、広島で起きたことを二度と繰り返してはいけないと感じた」と述べた。

 ウクライナが戦禍にあることし。広島での式典への出席には「最も重要な意味があった」とし、核兵器の脅威にさらされているウクライナは、被爆国日本の人々と思いを共有している、と強調した。(宮野史康)

(2022年8月7日朝刊掲載)

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