×

ニュース

大久野島沖の毒ガス兵器? 引き揚げ処理へ 環境省

■毒ガス問題取材班

 竹原市大久野島沖の海底で今年1月、毒ガス兵器とみられる不審物約20個が見つかり放置されてきた問題で、環境省が委嘱した専門家の検討会は22日、引き揚げて処分すべきだとの見解を示した。同省は「内閣官房と協議の上で早急に着手し、年内には終えたい」としている。

 検討会は森田昌敏愛媛大教授(環境毒性学)を座長に化学兵器の専門家や医師ら11人で構成し、この日は8人が出席。住民の不安を解消するため、不審物を引き揚げて内容物を分析、特定し、法令に従って適切に処理する必要がある―との結論に達した。サンプル調査ではなく、約20個すべてを回収するよう求めた。

 不審物は写真の形状などから旧日本軍のくしゃみ性ガス「あか筒」の可能性があるとの認識でも一致した。「現時点で安全面の問題はない」とし、引き揚げ作業で化学剤対応の特殊潜水服は着用しなくても危険はない、との判断も出した。

 検討会は、国内各地で見つかった毒ガス弾などへの対応を協議するため年数回、定例で開く。今回は斉藤鉄夫環境相も出席した。傍聴した広島県危機管理課の本瓦靖課長は「やっと方向性が見えたのは評価する。早く作業に入ってほしい」と要望した。大久野島沖では今月、中国新聞の潜水取材でも、新たに毒ガス兵器の可能性がある不審物約15個が海底から見つかった。周辺海域の実態調査について、環境省の塚本直也毒ガス情報センター長は「まずは約20個を分析し、それを受けて内閣官房がどう判断するかだ」と述べた。

大久野島の毒ガス工場
 1929年、旧陸軍造兵廠(しょう)火工廠忠海兵器製造所として開所した。(1)「きい1号」と呼ばれたびらん性のイペリット(2)催涙性の「みどり」(3)ヒ素を原料にしているくしゃみ性の「あか」―などを製造した。米太平洋陸軍の資料によると、総生産量は原液状態で6616トンに上る。

(2009年6月23日朝刊掲載)

関連記事
大久野島沖の毒ガス兵器? 本紙潜水取材で確認 (09年6月26日)
毒ガス弾?放置 海底367ヵ所で金属反応 (09年5月14日)
広島・大久野島沖海底で毒ガス弾?発見 4ヵ月放置(09年5月11日)

年別アーカイブ