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県原爆被爆者協議会会長に2世の本間さん 「心のよりどころ必要」 体験継承へ聞き取りも視野

 広島・長崎原爆の被爆者たちでつくる県原爆被爆者協議会の会長に、被爆2世として初めて本間恵美子さん(72)=松江市=が就任した。全国の被爆者団体が会員の高齢化などで解散していく中、「一人でも被爆者が元気でいるうちは、心のよりどころが必要」と協議会の必要性を訴える。(寺本菜摘)

 広島市で入市被爆し、2013年に90歳で亡くなった母の淳(あつ)さんは、本間さんに被爆体験を語ることはなかった。毎年8月6日の午前8時15分を迎えると「テレビを消して」と頼まれる。「どうして」と聞くと、「思い出したくない」。淳さんが亡くなった後、本間さんは同市を訪れ、被爆者手帳を基に居住地などを調べたという。

 原美男前会長(95)の依頼を受け、会長職を引き受けた。被爆を知らない世代への交代に迷いもあったが、ロシアのウクライナ侵攻が続く中、来年広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)などで核問題への国際社会の対応が注目されている。「平和に向けこれから頑張るぞと世界中が思っている時に、県の協議会をなくすわけにはいかない」と、会を受け継ぐことを決意した。

 県内の被爆者の平均年齢は90・06歳と容赦なく高齢化は進む。不安があるのは後世への継承活動だ。学校で語り部活動をする被爆者の送迎サポートや、手記の朗読など、内容は模索が続く。昨年から募っている被爆体験記「未来へつなぐメッセージ」も「文字にすることに抵抗がある人もいるから」と、今後は聞き取りに出かけることも視野に入れている。

 6日、松江市で開いた慰霊祭やパネル展には、4年前に解散した益田市の被爆者団体からの参加もあった。「被爆者が思い描く平和への期待や戦争反対の思いを吸い上げ、形にする」。遠方から思いを届けに来た被爆者との対話を通じて、思いを強めた。

(2022年8月9日朝刊掲載)

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