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社説・コラム

『記者のつぶやき』 被爆者の声 受け止めて

 「希望と絶望を行ったり来たり、だった」。核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ、米ニューヨークを訪れた日本被団協の木戸季市事務局長(82)は現地で最後の証言を終え、激動の1週間を振り返った。

 5歳の時に長崎で被爆した体験を語ると、海外の若者らは「母国でも伝える」と涙を流した。その姿に核兵器のない世界への光明をみたという。一方、核兵器禁止条約への参加を政府に求めた会談で、消極的な言葉を並べた日本の大使には「心底がっかりした」。

 6月にオーストリアであった核兵器禁止条約の第1回締約国会議に次ぐ海外渡航。身にこたえるのでは、と尋ねると「多くの被爆者の願いに導かれている。だから乗り切れるんだ」と即答した。まっすぐに被爆の惨禍を伝えるその訴えを、再検討会議に出席する各国代表は受け止めてほしい。(ニューヨーク樋口浩二)

(2022年8月10日朝刊掲載)

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