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原爆で散逸の画業一冊に 広島でも活動 田中頼璋 

■記者 藤村潤平

孫らが初の作品集 大観に並ぶ才能に光

 大正期の中央画壇で活躍し、晩年は広島市で過ごした日本画家田中頼璋(らいしょう)(1866~1940年)の初の作品集が完成した。当時は横山大観と並び評価されたものの歴史に埋もれた画業を、廿日市市の水墨画家や東京の遺族がまとめた。

 全国の美術館や個人が所蔵する作品から代表作53点と年譜、書簡を収録。頼璋を長年追う廿日市市の水墨画家岡原大崋(たいか)さん(48)や孫の田中謹之助さん(85)=東京都練馬区=たちが編集した。頼璋が得意とした写実味の強い山水画のほか、あまり知られていないコイなどの動物を描いた作品も紹介している。

 島根県市来村(現邑南町)出身の頼璋は、中央画壇で才能を認められ、文展(日展の前身)出品作が1916年から2年連続で特選に輝いた。1919年発行の「東西画家格付表」では横山大観らとともに「一等席」に並んだ。しかし、時代の潮流に乗れず、23年の関東大震災後に広島市へ閑居。原爆で作品も散逸し、画集が出版されたことはなかった。

 岡原さんは「個性的な作品を打ち出すことができず、画壇から忘れ去られたが、広島でも求められるままに多くの作品を描いた。悠然と己の筆を貫いた頼璋に再び光を当てたい」と話す。

 A4判、124ページ。自費出版した300部のうち200部は美術館や関係者に配り、100部を8千円で販売する。寺田文美さんTel082(507)0512。

(2009年6月23日朝刊掲載)

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