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広空襲の全貌 一冊に 旧海軍史 長年の研究成果 相原謙次さん 資料写真も充実

 広郷土史研究会(呉市)顧問で元大和ミュージアム参事の相原謙次さん=呉市海岸=が、太平洋戦争末期の同市広地区への空襲などをテーマにした「広空襲の全貌と工僚神社」を自費出版した。一次資料を丹念に追い、戦中の写真も数多く入手して掲載。旧日本海軍史について長年研究を続けた成果で、「先人の思いや当時の様子を後世に伝えたい」と筆を執った。(上木崇達)

 米国立公文書館や呉市などが所蔵する資料を読み解き、体験者たちへの聞き取りも重ね、231ページの本を完成させた。航空戦の比重が高まった太平洋戦争の実態に即し、海軍の航空機製造の拠点だった広地区に注目。米軍による空撮を中心に、爆撃の前、空襲で黒煙を上げるさなか、爆撃後の写真をそろえるなど、空襲の実態に迫った。空襲警報のあった日時なども表にして詳細に収録した。

 「1945年3~7月に計14回」とされることの多い市内への空襲について、海面への機雷投下や機銃掃射も含めて精査し「21回に上る」と指摘。空襲時の消火活動に奮闘した消防署員たちに感謝の気持ちを記す立て札が街角にあったことなど、当時の市民の思いを伝えるエピソードも紹介する。

 相原さんは、広地区の海軍工廠(こうしょう)の殉職者をはじめ戦争犠牲者を祭る工僚神社(広両谷)で毎年開かれる慰霊祭に携わっており、同神社の合祀(ごうし)者の名簿も掲載した。非売品で、計100冊を作って地元の小中学校や市などに寄贈。「私は戦争経験者から生の声を聞けた世代。子どもからお年寄りまで、幅広い年代の人に読んでほしい」と話している。

(2022年8月15日朝刊掲載)

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