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原爆の記憶 聞き取り 追悼祈念館が代筆事業

顔や体がむくんで誰が誰か分からなかった

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)が、広島の原爆を経験した県内の高齢者から聞き取りを進めている。来年3月末までに5人の証言を代筆し、体験記として館内で公開する。

 広島市や廿日市市、府中町に住む80~90代。うち安佐北区の高橋末子さん(84)は追悼祈念館に出向いて職員の聞き取りに応じた。原爆投下時は、旧向原町(現安芸高田市)の向原国民学校(現向原小)2年で自宅近くの畑にいたが、救護所となった学校に軍人が運び込まれ「顔や体がむくんで誰が誰か分からなかった。丸太ん棒のようだった」と証言。負傷者の体からうじを取り除いたという。

 原爆投下後に広島駅に行った記憶もあり、救護被爆や入市被爆に当たる可能性があるが、結婚差別を心配した母親の助言で被爆者健康手帳は申請しなかった。ロシアのウクライナ侵攻を広島の惨状に重ね「核兵器が使われたらどうなるか若い人に知ってほしい」と語った。

 同館は代筆事業を2006年度に開始。21年度末までに169人から聞き取った。(宮野史康)

(2022年8月15日朝刊掲載)

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