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[NPT再検討会議2022] 核廃絶 脅威への「絶対的保障」 最終文書素案が判明

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、第1委員会(核軍縮)がまとめた最終文書の素案の全容が13日、分かった。核兵器の脅威を踏まえ「核兵器廃絶が、使用や使用の威嚇に対する唯一の絶対的保障」と再確認。当面の措置として、核兵器保有国が非保有国を核攻撃しない「消極的安全保障」に法的拘束力を持たせるよう求める。保有国に「先制不使用」宣言を促す案もあるが、交渉は難航必至だ。(ニューヨーク発 小林可奈)

 素案は12日付で、核軍縮の誠実な交渉を義務付けたNPT第6条に関し「進展が欠けている」と深い遺憾の意を表明。13項目の核軍縮措置を掲げた2000年や、核軍縮などの行動計画を柱とした10年の再検討会議の合意を履行するよう保有国に求め、核兵器廃絶の必要性を訴える。「消極的安全保障」に関連して、非保有国の安全を守るため、法的拘束力のある取り決めの速やかな検討に触れた。

 また、核兵器を全面的に違法化する核兵器禁止条約については、今年6月に第1回締約国会議が開かれて「宣言と行動計画の採択により終了した」などと事実関係のみ記述。禁止条約に反発する保有国への配慮がうかがえる。

 核兵器の非人道性を巡っては「核兵器の壊滅的な人道的影響への深い懸念を繰り返し表明する」と強調。ウクライナ情勢に絡んでは、ウクライナの核兵器放棄と引き換えにロシアと米英が安全を保障した1994年の「ブダペスト覚書」に従う重要性を説いた。NPTの履行のため、ジェンダーの視点や市民社会との協力の重要性も列記した。

 一方、委員会の補助機関の別の素案では、保有国による核兵器の先制不使用と、敵の核攻撃阻止や反撃などに役割を限る「唯一の目的」政策の採用を盛り込んだ。核抑止力の低下を嫌う保有国や、日本を含む同盟国の抵抗が想定される。

 第1委員会は15日以降、素案をたたき台に議論。第2委員会(核不拡散)第3委員会(原子力の平和利用)の討議も踏まえ、26日の閉幕までに最終文書の採択を目指す。ウクライナ情勢を受け、合意形成の鍵を握る保有五大国間で対立する中、決裂回避を優先し、合意内容が薄まる可能性がある。

(2022年8月14日朝刊掲載)

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