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連載・特集

海軍を描いた作家 大和ミュージアム企画展 <2> 模型の制作 契機に交友

 本展で取り上げた作家の一人、吉田満は1943年、学徒出陣で海軍に入隊。44年12月末には戦艦大和に副電測士として乗り込み、45年4月の沖縄特攻を体験する。奇跡的に生還し、小説「戦艦大和ノ最期」を著した。

 会場には、模型制作者の坂上隆が手がけた大和の100分の1模型を展示している。戦時中の44年11月下旬、呉で見た雄姿に感動し、戦後、限られた資料を基に67年から12年もの歳月をかけて制作。その精巧さは、数ある大和の模型でも最高傑作といわれる。

 坂上と吉田は、この模型制作をきっかけに交友した。模型のそばのパネルで紹介している吉田の原稿「『大和』の艦上生活余録」は、大和に初めて乗艦した時の思い出を記す。本展開催に向けた資料調査の際、神奈川近代文学館(横浜市)で発見した。

 模型の完成を記念して出版される本に掲載するため執筆していたが、吉田はその3カ月前に死去、未完の草稿は掲載されなかった。所蔵館とご遺族の許可を得て今回、並べて展示することがかなった。(大和ミュージアム学芸員 藤坂彰子)

 企画展「海軍を描いた作家 阿川弘之・吉田満・吉村昭」は呉市の大和ミュージアムで開催中。31日まで無休で、以後は火曜休館(祝日の場合は翌日休館、年末年始は開館)。来年3月31日まで。常設展とセットで一般800円など。☎0823(25)3017。

(2022年8月14日朝刊掲載)

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