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被爆と遺伝 早期解明を 放影研外部諮問委 ゲノム解析へ助言

 放射線影響研究所(放影研、広島市南区)が計画する被爆2世のゲノム(全遺伝情報)解析で、外部の諮問委員会が助言をまとめ、12日、放影研に提出した。放射線による遺伝的影響の早期解明とともに、研究データの慎重な取り扱いを要請している。丹羽太貫(おおつら)理事長は解析を進める考えを示したが、着手時期は明言しなかった。

 諮問委は助言で、放射線による世代を超えた影響への不安が根強い現状を踏まえ、ゲノム解析が「一定の結論をもたらす可能性がある」と指摘。研究を早期に進めるよう促した上で、研究結果による社会的な影響への配慮や、個人の遺伝情報を含む研究データの管理に万全の対策を求めた。

 具体的には、対象となる被爆者や被爆2世との信頼構築▽速やかな研究の推進▽データ管理に関する独自指針の作成▽適切な情報開示―など7項目を挙げた。

 諮問委は昨年8月に放影研が設置。被爆者や被爆2世、医師たち14人からなり、オンラインで今年4月まで計5回の会合を非公開で重ね、助言をまとめた。

 この日、長崎市の放影研長崎研究所で助言の受領式があった。前長崎大学長の片峰茂委員長はオンラインの記者会見でゲノム解析に関し、「当初は研究を不安視する意見もあったが議論を通じ理解が進んだ。被爆者が存命のうちに一定の結論を」と求めた。

 丹羽理事長は「助言を前向きにとらえ次のステップに進みたい」と説明。開始時期については、対象となる被爆2世たちの同意に時間がかかるとして「早く進める最大の努力はする」と述べるにとどめた。(明知隼二)

研究の手法 理解を共有 丹羽放影研理事長

 被爆2世のゲノム解析に関する外部諮問委員会の助言を受け取った、放射線影響研究所の丹羽太貫理事長の記者会見などでの主なやりとりは次の通り。

  ―諮問委の助言をどう受け止めますか。
 ゲノム解析は科学的にも社会的にも大きな意味のある研究で、多様な意見がある。諮問委では、被爆者や2世を含む委員に解析の進め方や手法を説明した。理解を共有でき、感謝する。

  ―ゲノム解析の意義は。
 放影研はこれまでも、親の被爆の子どもへの影響を追跡しており、今のところ影響は見られない。ゲノム解析は、長い歴史を持つ研究の最終段階という位置付けだ。放射線によるDNAレベルの変化の有無や頻度を調べ、従来より明快な答えが出せるだろう。

  ―結果として被爆2世への差別を生むなど社会的な影響もあり得る研究です。
 放影研は、前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)時代の調査手法への批判を今も背負う。諮問委だけではなく、一般の被爆者や2世、さらに広く社会の信頼も必要だ。無用な不安を呼ばないよう情報発信にも努める。

<外部諮問委から放影研への助言の主なポイント>

・被爆者、被爆2世からの信頼獲得の努力を
・速やかに研究を進め、被爆者が存命のうちに成果を出す努力をするべきだ
・データ管理では国の指針に加えて放影研の独自の指針を文書化し、流出などを防ぐ仕組みも必要だ
・研究の事前説明から実施、結果の公表に至るまで、被爆者や2世に寄り添った体制の構築を求める

(2022年8月13日朝刊掲載)

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