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連載・特集

海軍を描いた作家 大和ミュージアム企画展 <1> 事実忠実に 細心の注意

 広島県呉市の大和ミュージアムで、企画展「海軍を描いた作家 阿川弘之・吉田満・吉村昭~『大和』・『長門』・『陸奥』のものがたり~」が開かれている。戦争文学とその作家に焦点を当て、広島市出身の阿川弘之さんの遺族から寄贈された新収蔵資料も初公開。同館の藤坂彰子学芸員に見どころを解説してもらう。

 本展で取り上げた3人の作家は、戦後、手のひらを返したように反戦を唱えた世論の流れに強い違和感を抱いた共通点を持つ。もちろん、3人とも戦争を肯定する立場ではない。戦後の視点で戦争を非難するだけでなく、戦前・戦中の事実をありのままに受け止め、反省しなければならないとの思いからである。

 阿川弘之は、彼を含めた青年士官が体験した戦時中の青春や恋の物語である「春の城」を書き、さまざまな人がさまざまな思いで戦争に参加していたことを示した。吉田満は、戦後明らかにされた戦艦大和の沖縄特攻の体験を伝えるべく、連合国軍総司令部(GHQ)による検閲と闘いながら「戦艦大和ノ最期」を発表した。そして吉村昭は、戦争に寄せる人々のむせかえるような熱気を戦艦武蔵の建造日誌から読み取り、軍艦を主人公にした異色の小説「戦艦武蔵」で「戦争とは何か」という問いを深めた。

 3人は、事実を忠実に描くことに細心の注意を払い、取材を重ねた。企画展ではその過程を多彩な資料で紹介している。

 31日まで無休、以後は火曜休館(祝日の場合は翌日休館、年末年始は開館)。来年3月31日まで。常設展とセットで一般800円、高校生500円、小・中学生300円。大和ミュージアム☎0823(25)3017。

(2022年8月13日朝刊掲載)

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