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甲奴発平和の鐘楼 月内にも完成 カーター元大統領活動拠点 渡米の職人4人 作業順調

 戦時中に三次市甲奴町の寺から供出され、現在はジミー・カーター元米大統領(97)の活動拠点「カーターセンター」(米ジョージア州アトランタ市)で「平和の鐘」として展示されている鐘を納める鐘楼が今月中にも完成する。同町の大工を含む職人4人が渡米しており、現地スタッフと協力して日本の資材と伝統工法で建てる。市は、9月末に現地である落成記念式典へ公式訪問団を派遣する。(千葉教生)

 鐘楼建築のプロジェクトは、昨年12月から、ジョージア日米協会などでつくる現地組織と、甲奴町の住民でつくる「平和の鐘」プロジェクト支援実行委員会が連携して進めてきた。

 同センターの日本庭園付近に建つ鐘楼は瓦ぶきで、幅2・4メートル、奥行き2・8メートル、高さ4・1メートル。日本から送った世羅町産の樹齢150年のヒノキを使う。

 職人はまず、大工の近藤順孝さん(68)=甲奴町小童(ひち)=と小山大輔さん(39)=神石高原町=が今月上旬に渡米。11日には瓦職人の平田仁彦さん(48)=福山市新市町=と宮口愛士(ちかし)さん(30)=同=が出発した。

 4人は分担して、地元の職人4、5人に材木を組み上げる技術を指導したり、屋根瓦をふいたりする。作業は順調で、出発前に小山さんは「日本とは環境も気候も違うが、しっかりコミュニケーションを取って進めたい」と話していた。

 宮口さんも「日本の瓦の技術を通じて2市の交流に貢献したい」。平田さんは「世界的に戦争の不安が広がる中、平和に関わる仕事ができて光栄」と言う。

 鐘は戦時中に甲奴町小童の正願寺から軍事物資として供出され、戦後に英国を経て米国に渡った。1985年にアトランタ日本商工会議所などが買い取り、カーター氏に寄贈。同センターが日米友好の象徴として台座上で展示してきた。鐘の縁でカーター氏が90年と94年に甲奴町を訪問した。

 今回、支援実行委の呼びかけで集まった寄付金約200万円を鐘楼の材料購入や輸送の費用に充てる。職人4人については、アトランタ市に本社があるデルタ航空から航空券の提供を受け、宿泊も現地のホテルから協力を得られたという。最年長の近藤さんは「平和の象徴の鐘が末永く鳴り響くよう、丈夫な鐘楼を造りたい」と意気込みを語る。

(2022年8月13日朝刊掲載)

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