×

ニュース

[NPT再検討会議2022] 核軍縮へ具体的行動迫る 非保有国 不満や焦り噴出

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1委員会(核軍縮)で10日、「核兵器のない世界」に向けた具体的な行動を保有国に迫る発言が非保有国から相次いだ。ウクライナ情勢を背景に核軍縮と逆行する動きが国際社会で広がる中、非保有国の不満や焦りが噴出した。(ニューヨーク発 小林可奈)

 「私たちは何を待っているのか。核軍縮のための安全保障の条件はいつになったら整うのか」。各国・地域の代表による意見表明で、コロンビアが語気を強めて問いかけた。「現在と将来の世代のための議論を私たちはしているのか。容認できないような事態が起こるまで、あとどれだけの時間、同じ議論を続けるのか」と畳み掛け、核軍縮に向けた迅速な行動を強く求めた。

 NPTは米ロ英仏中の保有五大国に核兵器保有の特権を認める一方、第6条で核軍縮の誠実な交渉を義務付ける。「核兵器のない世界」へ、再検討会議での最終文書では2000年に「核兵器廃絶への明確な約束」を、10年に64項目の行動計画を盛り込んできた。

 しかし、世界には依然として約1万2700個の核弾頭があるとされ、ウクライナに侵攻したロシアが核兵器で威嚇し、使用リスクも上昇。NPT第6条や過去の会議での合意を守っていない保有国に対する非保有国の不信感が、第1委員会でも露呈した形だ。

 アラブ連盟は「核兵器削減の具体的な進展がないどころか、依然として同じ軍事・防衛政策を追求している。核兵器や運搬手段の近代化、国家間の核分野での協力も心配だ」とNPTの信用性に懸念を表明。米英の核実験被害を受けたキリバスは「核兵器の質的・量的な増強に失望している」と嘆いた。

 核兵器を全面的に違法化した核兵器禁止条約を推進するタイは、同条約の今年6月の締約国会議の成功を挙げ「近年前向きな進展もあったが、軍縮関連の約束が停滞し、50年以上にわたってほとんど履行されていない状況は遺憾」と強調。核兵器の脅威がない世界への行動を保有国に迫った。

(2022年8月12日朝刊掲載)

年別アーカイブ