×

連載・特集

海軍を描いた作家 大和ミュージアム企画展 <3> 徹底取材 物語るノート

 阿川弘之は広島市出身の作家である。1942年に東京帝国大を繰り上げ卒業後、海軍に入隊し、暗号解読の任に当たった経験を持つ。そのため、海軍にまつわる作品も多い。大和ミュージアムの名誉館長も務めていただいた。

 今年6月、ご遺族から約1万2千点に上る資料の寄贈を受けた。特に目を引くのは、作品ごとにまとめられた取材ノート。中でも「軍艦長門の生涯」のノートは60冊を超え、記載された人物名は200人を上回る。約2年半の新聞連載に当たって、それだけの取材量をこなしていたのだ。

 「戦艦武蔵」の著者吉村昭は、全国を取材して歩く作家として有名だったが、「各地を歩き回っていると、阿川さんがいらっしゃいましたという話をよく聞きます」と、阿川に手紙を送っている。

 ノートを読み進めると、72年に呉市を訪れ、呉海軍工廠(こうしょう)で働いた元工員たちから詳細に取材した内容もあった。本展では「軍艦長門の生涯」をはじめ、「暗い波濤(はとう)」「山本五十六」など海軍関係作品のノートを展示している。(大和ミュージアム学芸員 藤坂彰子)

 企画展「海軍を描いた作家 阿川弘之・吉田満・吉村昭」は呉市の大和ミュージアムで開催中。31日まで無休で、以後は火曜休館(祝日の場合は翌日休館、年末年始は開館)。来年3月31日まで。常設展とセットで一般800円など。☎0823(25)3017。

(2022年8月17日朝刊掲載)

年別アーカイブ