×

ニュース

[NPT再検討会議2022] ICAN 川崎哲氏に聞く 核禁条約 最終文書に明記を

「先制不使用」採択 困難か

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議が22日、最終週に入ったのに合わせ、非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))の川崎哲(あきら)国際運営委員に最終文書の内容や採択を巡る今後の交渉の見通しを聞いた。核兵器保有国が反発する核兵器禁止条約について、少なくとも事実関係が最終文書で明記される重要性を強調した。(ニューヨーク発 小林可奈)

 第1委員会(核軍縮)がまとめた最終文書の素案には、保有国による「先制不使用」宣言など、核抑止力の低下を嫌う保有国や同盟国の反発が予想される内容が盛り込まれた。一方で、核兵器を全面的に違法化した核兵器禁止条約は、昨年1月の発効など事実関係の記載にとどまる。禁止条約の推進国が求めている「禁止条約とNPTは補い合う関係」などの意義付けは見送った。

 川崎氏は「先制不使用」に踏み込んだ重要性を指摘しつつ、このまま採択に至るのは想定しにくいと見通した。禁止条約に関しては「NPTとの補完性などが含まれれば良いが、保有国が強く反発する中では今ある表記を残すのが大切だ。禁止条約の明記自体がNPTとの関係を物語る」と説いた。

 「内容が豊か」と評したのは、核兵器の非人道性を巡る記述。影響は短期だけでなく、中長期にわたり、食料や気候にも及ぶと列記してあり、「過去の再検討会議を踏まえると大きな前進」と力を込めた。核兵器の使用や実験の被害者、地域との交流に触れた点にも着目。「核の被害者や地域は世界中に存在し、交流が核軍縮にプラスと示している」と受け止めた。

 1995年の会議で決めたNPTの無期限延長が「核兵器の無期限保有を意味するものではない」との認識を示した箇所は「保有国に辛口」と注目点に挙げた。非保有国の意見が随所に反映されているとして、背景に核軍縮推進国のマレーシアが第1委員会の議長国を務めた点を示した。

 ただ、最終文書の合意へは、保有国側が受け入れやすいように、表現が削られたり、内容が薄まったりする可能性を指摘。ウクライナ情勢などを背景に難航必至とされてきた最終文書の採択の可能性は「高いとは言えない」とみている。

(2022年8月23日朝刊掲載

年別アーカイブ