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本地堂部材から被爆破損の痕跡 広島東照宮で解体修復中 専門家分析 「春慶塗」創建時外観へ

 広島東照宮(広島市東区)の境内にある被爆建物の本地堂(ほんじどう)で進む解体修復の工事で、原爆で焼け焦げたり、破損したりしたとみられる部材が見つかった。外観に江戸期の伝統的な漆塗りの技法が施されていたことも分かり、22日に現地説明会で公開された。来秋の修復完了後、東照宮側は国重要文化財の指定を目指したいとしている。(川上裕)

 原爆による延焼の跡とみられる部材があったのは、本地堂の屋根を支えていた木材の一部。黒くすすが残った状態だった。戦後の修復で外観から被爆の痕跡が確認できなくなっていたが、解体した際に焼け焦げた部材が見つかり、専門家が検証したという。

 高さ約3・5メートルの柱の上部には、爆風で破損したとみられる約18センチのひび割れも見つかった。東照宮は爆心地から約2・1キロにあり、文化財建造物保存技術協会(東京)の坂井禎介さん(34)は「柱の上部の破損は珍しく、不自然な割れ方。原爆の爆風によるものだろう」と説明している。

 さらに外観の塗装には、顔料を含まない漆を重ね塗りする「春慶塗(しゅんけいぬり)」が施されていたことも判明した。木目が透けて見えるのが特徴で、今後この技法を生かした創建時の外観を再現する。

 1648年建立の東照宮は、本殿や拝殿が原爆で焼失。倒壊を免れた本地堂や唐門などは市重文に指定されている。本地堂の本格的な修理は初めてで、来年9月に完了する予定という。

 久保田実技(まさき)宮司(68)は「被爆の実態を後世に伝えていく。国重文に格上げしてもらいたい」と期待している。

(2022年8月23日朝刊掲載)

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