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社説・コラム

天風録 『ウクライナのためにできること』

 日曜日の本紙読書面に小さなコーナーがある。売り上げトップ10を表にしたベストセラーズ。話題の書がわかる。今春、20年前に出た一冊がランク入りした。東京に続き、広島でも。「物語 ウクライナの歴史」だ▲国の成り立ちや文化を元駐ウクライナ大使がつづる。小説「同志少女よ、敵を撃て」もランク入り。旧ソ連の狙撃兵が主人公だがウクライナ出身の兵士も登場する。ロシアによる侵攻を受け、大勢が手にしたのだろう▲ページを繰りつつ、かの地の人々の苦境を思う。豊かな国土は踏みにじられ、がれきの山と化してきた。その侵攻から半年。戦争は終わらず、きょうも兵士や市民、子どもが犠牲になる。一方、ウクライナ関連の本はいつの間にかランク外へ▲遠い国の戦争から身近な物価高へ関心が移るのは仕方ないことか。「資源大国」への制裁として各国は天然ガスなどの輸入を制限し、燃料費や電気代が上がる。「世界のパンかご」は焦土となって小麦の流通が滞り、アフリカの食糧危機はなお続く▲ウクライナの「物語」は世界の、私たちの物語でもある。ロシアの撤退と戦争終結へ、何かできることはないか。せめて本を読んで心を寄せていたい。

(2022年8月24日朝刊掲載)

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