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連載・特集

グリコ展100年の造形美 <上> 戦前・戦後期のおもちゃ

 広島県呉市下蒲刈町の三之瀬御本陣芸術文化館で、特別展「グリコ展―須田国太郎の愛したグリコのおもちゃ―」(中国新聞社など主催)が開かれている。江崎グリコ(大阪市)のキャラメル菓子に同封された、小さなおもちゃが映す世相の変遷をたどる。洋画家須田国太郎(1891~1961年)も注目したその造形美など、見どころを3回にわたって同館の湯浅ひろみ学芸員に解説してもらう。

創意工夫し 子どもに希望

 1922(大正11)年の発売から今年で100年を迎えた栄養菓子グリコ。商品名の由来となった、カキの成分グリコーゲンが入ったキャラメルで、発売当初から絵カードが付いていた。「子供にとって食べることと遊ぶことは二大天職」という創業者の考えの下、付属のおもちゃを「おまけ」と呼ばないこだわりが生まれる。

 27(昭和2)年ごろから、歴史上の英雄などをモチーフにしたメダルが登場。造幣局に発注して質を追求した品で、人気を博した。35年以降はオリジナル豆玩具となり、子どもたちの憧れのバイクや軍艦などがアンチモニー合金で精緻に作られた。

 時代は戦争へと突入し、材料不足から次第に紙製が主流となる。「泣笑二面相」は、しかけを動かすと泣き顔と笑い顔に変化する。限られた材料でも創意工夫で子どもたちに笑いや発想、希望を届け続けた。

 42年に製造中断となるが、47年に復活。この時は、クレヨンや消しゴム、地面に落書きができるろう石など実用小物が好まれた。おもちゃを通して時代背景が見えてくるのも面白い。

 9月26日まで、火曜休館。一般500円など。同館☎0823(70)8088。

(2022年8月24日朝刊掲載)

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