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侵攻受けるウクライナ出身 平石さん 大切な人奪わないで 薬や服 広島から避難民支援

親族通った道 15分後に着弾

 ロシアの侵攻を受けるウクライナ出身の平石エレナさん(43)は広島県内でチャリティーコンサートを開き、収益を現地の生活や治療の支援に充ててきた。24日で侵攻開始から半年がたつ。「これ以上、戦争で命を奪わないで」。切実な願いを胸に、母国に平穏が訪れる日を待ち望んでいる。

 平石さんはウクライナ東部の都市、ドニプロ出身。日本語を学ぶため約20年前に来日し、広島市に住む日本人の夫と結婚。3人の息子に恵まれた。侵攻を受け、三男英心リチャードさん(15)のバイオリンと、友人の岡野純大さん(16)のピアノによるコンサートを県内で開いている。

 公演は3~5月、広島市や三次市などで11回に及んだ。会場での募金を含めて収益約200万円を母国の親族が関係するロータリークラブに送り、避難民の薬や包帯、服、布団などの購入に充てられた。「皆さんの協力に感謝の言葉しかない」と平石さん。親族から届いた写真で避難民が喜ぶ姿を見ると、心がほんのひとときだが休まるという。

 侵攻後、ふるさとの様子を伝える映像や写真に目を凝らしてきた平石さん。首都キーウ(キエフ)や原発施設への砲撃など状況が悪化し、「悪夢を見ているようだった」。半年がたったが、軍事侵攻の終息は見通せない。1カ月ほど前にも仕事帰りの親族が車で通った道に15分後、着弾があったと聞いた。言いようのない不安な日々を送る。

 母親はロシア生まれ。プーチン大統領は核兵器の使用をちらつかせる。ウクライナでは核兵器を持っていれば侵攻されなかったと考える人もいる。だが、平石さんは「核兵器を持つことは絶対に反対。持っていて戦争が起きない保証はない」と強調する。

 コンサートは今月28日に廿日市市、9月4日に東区でも開く予定だ。家族がいる南区と三男が留学するドイツを行ったり来たりの生活。その中で世界で初めて原爆を落とされた広島は「特別な場所」と実感している。この地で、平和への願いが世界へ広がるよう活動を続けていく。(浜村満大)

(2022年8月24日朝刊掲載)

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