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海軍を描いた作家 大和ミュージアム企画展 <5> 創作の現場 座って体感

 戦後77年を経た今、戦争体験者から証言をじかに聞くことは困難な時代になった。一方で、自費出版も含めて多くの戦争体験記が残され、各地の図書館などに所蔵されている。ただ、個々の体験記は内容がまちまちで、体系的な分類も十分にされていない。

 そこで、時代背景を随所で説明し、主張が整理された文学者の表現を絞り込んで紹介することを、本展のテーマとした。世代を超えた体験継承のための一つの手法として位置づけた。

 今回、来館者が3人の作家の作品を「体感」できる仕掛けを三つ用意した。一つ目は、小説の一部を音声化し、会場で視聴できる映像作品にすること。朗読を広島県出身の声優に依頼し、映像には作品に関連する写真を多用した。

 二つ目は「インタラクティブ展示」。会場のスクリーン上に浮かぶキーワードに触れると、作中の文章やその解説、関連画像が出る仕組みである。

 三つ目は、作家の創作の現場を再現すること。資料の寄贈を受けた関係で、阿川弘之の書斎を再現した。ぜひ作家のいすに座り、体感してほしい。(大和ミュージアム学芸員 藤坂彰子) =おわり

 企画展「海軍を描いた作家 阿川弘之・吉田満・吉村昭」は呉市の大和ミュージアムで開催中。31日まで無休で、以後は火曜休館(祝日の場合は翌日休館、年末年始は開館)。来年3月31日まで。常設展とセットで一般800円など。☎0823(25)3017。

(2022年8月20日朝刊掲載)

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