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江戸・明治 地域医療の足跡 広島大医学資料館 20年ぶり展示リニューアル 解剖や新薬の文献 新たに

 広島大医学部医学資料館(広島市南区)が約20年ぶりに展示を刷新し、今月、リニューアルオープンした。西洋医学の導入が進んだ江戸末期、広島で地域医療にまい進した先人の足跡を物語る貴重な古文書や医学文献を新たに出展した。初公開資料の一部を紹介する。(桑島美帆)

 医学資料館は広島大霞キャンパスにあり、1階に515平方メートル、2階に470平方メートルの展示スペースを備える。今回、1階に「広島の医学」コーナーを新設。爆心地として知られる島病院(現島内科医院、中区)を引き継ぐ島一秀さん(87)が今春寄贈した、江戸-明治期の医学文献をメインに据えた。

 国内初の銅版印刷による解剖図「医範提綱(いはんていこう) 内象銅版(ないしょうどうばん)図」(1808年)、ドイツの解剖書などを基に作成された「解剖攬要(らんよう)」(81年)、7種類の新薬を解説した「七新薬」(62年)など、約30点の文献やノートをガラスケースに並べている。これらは島家の先祖が中野村(現安芸区)で営んでいた医院跡に残っていた。

 監修した広島大75年史編纂(へんさん)室の石田雅春准教授(46)は「西洋医学が異端視されていた時代に、広島の農村の医師が先進的な治療に取り組もうとした貴重な証拠。非常に価値がある」と強調する。

 現在の南区仁保地区で代々医院を営んでいた大橋家が寄贈した資料のコーナーも設置。明治期の通院患者の名簿「日々患者人名帳」、大正期の薬品の購入記録「御通」などを公開した。当時の地域医療の現場が垣間見える。

 医学資料館は、霞キャンパスに立っていた被爆建物の旧広島陸軍兵器補給廠(しょう)を改装し、国立大医学部では初めての資料館として1978年に開館。99年に往時の面影を残して建て替え、現在地へ移転した。国重要文化財の骨格模型「身幹儀(星野木骨)」(1792年)や、「解体新書」(74年)の初版など約2万点を所蔵。館内では約800点を展示している。

 今回のリニューアルに合わせ、山口町(現中区)出身の漢方医吉益東洞(よしますとうどう)(1702~73年)が出版した「建殊録」や、19世紀に新生児のへその緒を切る際に使っていたとみられる鉗子(かんし)も常設展示に加えた。

 展示品は定期的に入れ替えるという。見学は事前予約が必要。医学資料館事務室☎082(257)5099。

(2022年8月25日朝刊掲載)

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