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連載・特集

グリコ展100年の造形美 <中> 須田コレクション

時代の最先端 精巧に反映

 近代洋画壇で活躍した須田国太郎(1891~1961年)の知られざるコレクションがある。1935年ごろから最晩年まで収集したグリコのおもちゃだ。49~61年のものが現存し、その数715点。写真は53~57年のものである。

 50年代、世界各国の風物をおもちゃで紹介する「世界一周」シリーズが登場。各国の大使館や航空会社から提供された資料を基に、パリのエッフェル塔やロンドンの衛兵、米国車キャデラックなどが解説文付きで小さな形となった。スペイン留学時に多くの国を訪れ、旅好きだった須田。収集熱も高まったことだろう。

 時は高度経済成長の初期である。「三種の神器」と呼ばれた白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫をはじめとする家電・家具、オート三輪など乗り物も豆玩具となって、子どもたちに豊かな生活への憧れと夢を与えた。ブリキや木、セルロイドでできた長辺3センチほどのサイズだが、精巧で、時代の最先端を素早く反映させた。やがてプラスチック製の時代を迎える。

 須田はこれらのおもちゃを時々出しては眺め、発想やデザイン、造りに感心していたという。(三之瀬御本陣芸術文化館学芸員 湯浅ひろみ)

 「グリコ展」(中国新聞社など主催)は呉市下蒲刈町の三之瀬御本陣芸術文化館で9月26日まで。火曜休館。一般500円など。☎0823(70)8088。

(2022年8月25日朝刊掲載)

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