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原爆症 認定範囲拡大せず がん以外 厚労省検討会が最終報告

 厚生労働省の原爆症認定制度の在り方に関する検討会は4日、最終報告をまとめた。心筋梗塞などがん以外の主な病気について、被爆条件を細かく設定する見直しを軸とし、現行の認定範囲の拡大を事実上否定する内容。厚労省は年内にも具体的な見直し策をまとめる。

 最終報告では、現行の認定範囲について、委員の多数意見として「放射線の影響が科学的に明確ではない部分まで認定している」と指摘。範囲拡大に否定的な見解を示した。

 積極認定する病気ごとに新たに被爆条件を設けることで「(国が相次ぎ敗訴した)司法判断との隔たりが縮小する」と提言。条件を設ける際には「これまでの認定範囲を狭めてはならない」と求めた。

 現行の認定制度を廃止し新たな手当制度の創設を求めてきた日本被団協は、前回会議で示された報告案に反発。11月26日に対案を厚労省に提出した。

 がん以外の主な病気の認定要件として明示する原爆放射線と病気との関連性(放射線起因性)を削除するなどの対案内容は報告に反映されたものの、多くは一意見として併記されるにとどまった。

 被団協などは会議後、最終報告への抗議声明を発表。報告に沿った見直しがされれば「がん以外の病気の認定範囲を狭くする」との懸念をあらためて訴えた。(藤村潤平)

原爆症認定制度
 原爆症認定集団訴訟で国が相次ぎ敗訴したのを受け、2008年4月から現行基準に見直された。爆心地から約3・5キロ以内で被爆▽原爆投下から約100時間以内に約2キロ以内に入市―などの条件で、がん、白血病、心筋梗塞、慢性肝炎・肝硬変など七つの病気を積極認定。それ以外は総合判断で認定している。日本被団協は、認定と司法判断になお隔たりがあると訴え、厚生労働省は10年12月、有識者による検討会を設置。26回の会議を重ね、最終報告をまとめた。

(2013年12月5日朝刊掲載)

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