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連載・特集

グリコ展100年の造形美 <下> 加藤裕三のデザイン

木の優しさ宿す 心地よさ

 画像は「あかんべぇナマズ」(1990年)と「カニさんゆらりん」(91年)。木彫家でおもちゃデザイナーの加藤裕三(1950~2001年)による、命名もユニークなグリコのおもちゃである。

 上左端のナマズと下右側のカニは、木製の試作品。商品はプラスチックで販売されたが、木彫家の加藤は「形に木から削り出したという記憶を残すことが大切」と、木の持つ優しさにこだわった。87年から7年間、デザインを担当。「親子で遊べるおもちゃ」を多く生み出した。

 車輪付きのあかんべぇナマズは、動かすと口から舌が出入りする。上右端の商品は本体が透明で、中のしくみが見える。子どもたちが分解し、また組み立てて遊ぶことを促す工夫だ。加藤のデザインは握り心地のいい丸みを帯びた形が特徴で、感覚を育むアイデアが詰まっている。

 その後、グリコのおもちゃは98年に「木のおもちゃ」シリーズを発表。現在のシリーズも木を使用している。加藤の目指した方向は、今もなお息づいている。(三之瀬御本陣芸術文化館学芸員 湯浅ひろみ)

 「グリコ展」(中国新聞社など主催)は呉市下蒲刈町の三之瀬御本陣芸術文化館で9月26日まで。火曜休館。一般500円など。☎0823(70)8088。

(2022年8月26日朝刊掲載)

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