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家族写真が語る 被爆の惨状 追悼祈念館で特別展 200枚が並ぶ

 原爆投下前の広島で撮影された家族写真を紹介する特別展「家族の肖像 引き裂かれた絆」が、広島市中区の国立広島原爆死没者追悼平和祈念館で開かれている。破壊された家族の日常の姿を通じ、原爆被害の悲惨さや平和の大切さを伝える。31日まで。無料。

 開館20周年の記念企画として、これまでに遺族から寄せられた約200枚を展示。地下2階の円形の追悼空間の壁面には、爆心地付近から見た被爆後の街並みがパノラマで表現されており、家族写真をそれぞれの当時の住所の方角に合わせて配置している。

 うち1枚は、星野幸子さん(80)=西区=の一家6人が1943年に福屋百貨店(現中区)で撮影した記念写真。着物姿の祖母熊本ヒトミさんと、おめかしした姉の玲子さん=当時(7)、純子さん=同(5)=は2年後の45年8月6日、三篠国民学校(現三篠小)に向かう途中に被爆死した。

 一緒にいた星野さんは右半身にやけどを負いながらも助かった。自宅にいて軽傷だった母が大八車で祖母と姉の3人の遺体を運び火葬したという。会場を訪れた星野さんは「亡くなった祖母と姉のためにも、自分も生を全うしなくては」と話し、家族の歴史を刻む一枚と向き合っていた。

 地下1階の閲覧室では、星野さんの一家を含む6家族について、被爆体験記を添えて紹介している。同館は「今と同じような日常を送っていた家族の上に原爆が投下されたのを想像しながら見てほしい」としている。(明知隼二)

(2022年8月26日朝刊掲載)

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