×

ニュース

広島と関連付けて考えたい/核に頼らない平和を 府中中生、長崎原爆巡り討論

 広島県府中町の府中中生徒が8月9日の長崎原爆の日、全校で原爆投下を巡る討論会を開いた。長崎の被爆体験にも目を向け、核や戦争について考えを深めようと3年生の実行委員会が企画。意見を交わし、見えてきたものは…。

 討論会は、昨年度修学旅行で長崎を訪れた生徒たちが提案。事前に全校生徒にウェブアンケートをし、議論のたたき台を準備した。

 9日は長崎の原爆投下時刻に黙とうし平和祈念式典の中継を見守った。その後、各クラスをオンラインで結んで「原爆が投下されていなかったらどんな世界になっていたか」などをテーマに討論。この日は時間も限られ、グループごとに意見発表するにとどまった。

 「さらに考えたい」と実行委メンバー。この夏休みに再び全校生徒にアンケートを実施して声を集めた。

 初めての討論会に「何が正解か分からない」と戸惑う声があった。一方で「同じことを学んでいても人によって戦争や価値観には違いがあることを感じた」「考えれば考えるほどいろんな疑問が湧いてくるところが面白かった」など、前向きな感想も目立った。

 長崎原爆に着目したことで視野も広がったようだ。「2カ所に投下する必要があったのか疑問を持った。もっと広島と長崎を関連付けて考えていきたいと思った」「長崎の原爆についてもっと知りたい」

 ロシアによるウクライナ侵攻で核使用が懸念される中、現在の国際情勢へ考えを深めた生徒も。「核に頼らない平和をつくりたい」「なぜ原爆の恐ろしさを知る日本政府が核兵器禁止条約にサインしないのか不思議」とつづっていた。

 実行委の木下紗奈さん(14)は「同じテーマで長崎の中学生の意見も聞き、もっと深めてみたい」と先を見据える。担当の沓木(くつき)里栄教諭は「教師が答えを示すのではなく、生徒同士で意見を出し合いながら悩み、考えを深める大切さを感じた。ぜひ生徒たちの思いを次につなげたい」と話す。(森田裕美)

(2022年8月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ