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太平洋戦争下の子ども実情迫る 研究者ら「事典」刊行

 戦争は子どもたちに何をもたらすのか―。実情に迫った「事典 太平洋戦争と子どもたち」=写真=が、吉川弘文館(東京)から刊行された。研究者をはじめ社会科教員や施設職員、ジャーナリストたち19人が、47の問いに答える形式で解説している。

 「事典」というだけに、戦争がどう推進され、子どもたちの暮らしはどう変わったのかを、政治、文化、教育など幅広いテーマでひもとく。沖縄戦や空襲、原爆、引き揚げなどさまざまな理由で孤児となった子どもたちの暮らしぶりなどにもページを割いている。

 広島・長崎の原爆孤児については、中国新聞社の森田裕美記者が取材を踏まえて、背景を解説。被爆後に生きる糧を求め、海を渡った孤児たちの人生も紹介している。

 敗戦から77年。戦争の記憶が薄らぐ中、「再び戦争の惨禍が子どもを覆うことのないように」との思いを込め、戦争孤児の調査に取り組む研究者ら5人が編者を務めた。

 その一人で中学で社会科を教える平井美津子さん(61)=大阪市=は「子どもは戦時下で我慢を強いられ、戦後は見捨てられた。今も世界には戦争の犠牲になっている子どもがたくさんいる。過去から学び、二度と繰り返してはいけないことを考えてほしい」と話す。A5判172ページ、2420円。(湯浅梨奈)

(2022年8月29日朝刊掲載)

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