×

連載・特集

ぐるっと わがまち 広島市東区福田・馬木エリア <中> 戦争・被爆 紙芝居で継承

「ゆずりは会」 児童に披露

 「お母ちゃんに会いたいよ、お母ちゃん!」。77年前、馬木地区で涙ながらに訴えた子どもたちの姿を情感豊かに表現する。地元住民でつくる「ゆずりは会」が10日、上温品児童館(東区)で小学生を前に紙芝居を上演していた。

 紙芝居の題名は「ひろしくんたちの疎開」。1945年4月、馬木の安楽寺に疎開してきた舟入国民学校(現舟入小、中区)の児童の生活を伝えるストーリーだ。家族と離れた寂しさ、空腹のつらさ…。戦争・被爆体験の継承に取り組む同会が、住民への聞き取りを基に2000年7月に制作した。児童の多くは原爆投下で家族を失ったという。

 名誉会員の田中譲二さん(88)は「中心部から離れた馬木でも爆風で窓ガラスが割れた」と記憶をたどる。当時、疎開児童と交流した田中さんは紙芝居に登場する馬木の子どものモデルでもある。「戦争は二度と起こしてはいけない」。10日の上演会で子どもたちに語りかけた。

 馬木公民館を拠点とする同会は毎夏、地域の小学校で紙芝居を披露してきた。新型コロナウイルス禍で途絶えたが、3年ぶりに再開した。真剣な表情で聞き入る子どもたち。その姿に、代表の新畑宗子さん(68)は「戦争の悲惨さや命の尊さを分かりやすく伝え続けたい」と決意を新たにしていた。(前田薫奈)

(2022年8月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ