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[NPT再検討会議2022] 最終文書案再改定【解説】核軍縮の内容 大きく後退

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が25日に2度改定した最終文書案は、核軍縮に関する内容が大きく後退した。核超大国ロシアによるウクライナ侵攻を背景に多くの対立点を抱える中、核軍縮と不拡散の「礎石」とされるNPT体制の維持へ、核兵器保有国が受け入れやすいように譲歩を重ねた結果だ。核兵器廃絶は見通せず、被爆地の訴えに応えていない。(ニューヨーク発 小林可奈)

 最終文書案は、素案の段階から核軍縮の方策の乏しさが非保有国から指摘されていた。数値目標や期限の設定が欠けていた点が代表的だ。その上で、核抑止力に依存する保有国や同盟国の従来の主張が、最終局面で相次ぎ反映された。

 核兵器の役割を減らす意味がある、核兵器を相手より先に使わない「先制不使用」宣言を保有国に促す文言は25日の最初の改定で削除。非保有国に核兵器の使用や威嚇をしない約束を示す項目から「いかなる状況でも」との前提を削った。

 2度目の改定では、核兵器禁止条約に関する事実関係のみ記載した項目から、第1回締約国会議で「宣言と行動計画を採択して終えた」との文言を落とした。この宣言と行動計画は「NPTと補い合う」など、条約推進国が最終文書に表記を求めてきた禁止条約の意義を含む。それを徹底して認めたくない保有国側の反発が透けて見える。

 核の脅威が高まる今、2015年の前回会議に続き最終文書を採択できなければ、NPTの実効性は確かに揺らぐ。ただ、危機にあるからこそ、国際社会は当面の対立の解消や体制維持に腐心するのではなく、核兵器廃絶への揺るぎない姿勢を最後まで貫くべきだ。

(2022年8月27日朝刊掲載)

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