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連載・特集

『生きて』 NPO法人「食べて語ろう会」理事長 中本忠子さん(1934年~) <1> ばっちゃん

非行少年たちに手料理

 NPO法人「食べて語ろう会」理事長で、元保護司の中本忠子(ちかこ)さん(88)=広島市中区=は40年以上、自宅のある基町で居場所がない子どもたちに手料理を振る舞い、非行から立ち直るきっかけをつくってきた。「ばっちゃん」として慕われ、今も子どもたちに温かいまなざしを注いでいる。

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 孤独、空腹、環境。非行と再犯を防ぐには、この三つを立て直すことが大事だと信じてやってきた。子どもが悪さをする根底には、親に構ってもらえんというのがある。まずは黙って話を聞き、こっちからは何も質問しない。補導されて警察にさんざん聞かれているような子には特にね。慣れてくると自分の方からいろんなことを話してくるものです。

 私はいつも「そうなん」って聞くだけで大げさに反応しないし、説教も指導もしない。もちろん、今から悪さをすると言ってくるような子には「ばか」って怒るよ。私が自然体じゃけん、子どもたちも話しやすいんじゃないかね。

  ≪保護司を務めて30年。2010年に引退した。それでも連日、早朝から夜遅くまで1日40件近く電話をかけたり、受けたりする≫

 いろんな子や親から困り事の電話がかかるの。保護司時代には暴走族に入っている少年の面倒をみていたこともある。夜中に何度も電話がかかってね、警察署に迎えに行ったこともある。あの頃に比べると、最近は少なくなったよ。

 難しい相談事も多いのよ。自分で判断できん時には、役所の人や専門家にすぐ電話するの。どうしたらいいかねって。思い悩むことがあったら私もストレスがたまるじゃない。考える前に思い立ったらすぐ動く。いろんな人の助けを借りるのよ。

 子どもの数は減っても、困っている子どもの数は変わらない気がする。でも、大きな事件にならないと社会は気付かんことがほとんど。それじゃあいけんよね。子どもたちの様子をよく見て、SOSに気付く目を持ち続けたい。おせっかいと思われてもいい。私ら大人が見て見んふりは一番いけんと思うよ。 (この連載は報道センター社会担当・赤江裕紀が担当します)

(2022年8月30日朝刊掲載)

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