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「知る権利損なう」 秘密保護法案 参院委可決 市民団体 原発隠蔽を懸念

 特定秘密保護法案が、参院国家安全保障特別委員会で可決された5日、中国地方の市民団体は「知る権利」が損なわれ、権力を監視する活動に大きな制限を受けることを懸念し、反発を強めた。慎重審議を求める声を聞き入れない与党の姿勢にも異議が相次いだ。

 「国民の怒りが爆発しないうちに通してしまえ、という横暴なやり方だ」。広島・市民オンブズマン会議の澤田良平代表幹事(75)はそう憤る。

 広島県や県警などの公金の使い道を追及しているが、現状ですら公開される情報は限られていると感じる。秘密の対象がなし崩し的に拡大すると指摘し「自治体が情報公開に後ろ向きになり、国や自治体を監視する力が弱まれば、国家の情報は国民のものという根底が覆る」と警鐘を鳴らす。

 同法案は、特定秘密4分野の一つに「テロ防止」を挙げる。中国電力島根原子力発電所(松江市)の再稼働に反対する「さよなら島根原発ネットワーク」の杉谷肇共同代表(72)は、原発の運転トラブルや人的なミスを「政府がテロ対策などの名目で隠すのではないか。島根県や松江市にすら情報が来ない恐れがある。市民への避難指示が遅れかねず、安全は守られない」と訴える。

 「軍用機の騒音などは周辺住民の苦痛となるだけに、情報は公然であるべき。萎縮するつもりはない」。岩国市の米海兵隊岩国基地で軍用機の運用などを監視する「リムピース」の田村順玄共同代表(68)は、法案が成立してもこれまで通りに活動することをあらためて誓う。

 弁護士やマスコミ経験者などでつくる「STOP!国家秘密法 広島ネットワーク」の沢田正共同代表(64)は「思想や信条に入り込み、表現を弾圧する法律。テロの定義に『その他』という曖昧な文言があり処罰範囲はどこまでも広がる恐れがある。軍港の風景を描いただけで処罰される日が来るかもしれない」と懸念する。

 「米国の軍事情報の隠蔽(いんぺい)につながる」。11月30日に秘密保護法案の廃案を求める特別決議をした広島県原水協の高橋信雄代表理事(74)はそう語気を強める。「核使用を伴う米軍の作戦に日本が協力したとしても、ベールに包まれたままとなる。そんな国が核兵器廃絶を世界に訴えていけるのか」

 この日、7月の参院選の1票の格差を問う訴訟で、広島高裁は「違憲状態」とする判決を出したばかり。高橋代表理事は「いまの参議院に重要法案を審議する資格はない」と突き放した。

(2013年12月6日朝刊掲載)

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