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原爆供養塔清掃・証言活動に尽力 故佐伯敏子さんの思い一冊に

 平和記念公園(広島市中区)の原爆供養塔の清掃を続け、被爆証言に力を尽くした佐伯敏子さん(2017年に97歳で死去)を紹介する本を市民団体「ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会」が発行した。実行委が生前に聞き取った証言のほか、短歌や詩も収録。約7万人といわれる身元不明の犠牲者の遺骨が眠る供養塔に通い続けた佐伯さんの思いを伝える。

 佐伯さんは米軍の原爆投下により母親や兄妹たち親類13人を奪われ、自身は郊外から家族を捜しに市内に入って被爆した。供養塔を原爆納骨安置所と呼び、1998年に脳梗塞で倒れるまで40年以上にわたり清掃を続けた。安置された遺骨の遺族も捜し、返還につなげた。

 本の題名は、「原爆納骨安置所を守り続けて 佐伯敏子さんの証言」。収録された96年の証言では、清掃を続ける思いを「私たちは人間。殺されたのも人間。人間が死者の思いをしっかり受け止めていかなければ」などと語っている。

 また、佐伯さんの供養塔での清掃作業などを収めた写真13枚や本人が作った短歌や詩も掲載。短歌の一つは、佐伯さんが原爆資料館(中区)に寄贈した母の遺品の眼鏡について「原爆が 飛ばせし母の 首にそう めがねのふちは 形見となりぬ」と詠んでいる。

 本の冒頭は「広島には歳はありません。五〇年経とうが、一〇〇年経とうが、この世界の中で、人間を殺す道具があるかぎりは、広島に歳をとらせないでください」という佐伯さんの若者たちへの呼び掛けを大きく記した。実行委代表の中川幹朗さん(63)=南区=は「核兵器使用が懸念される今日こそ、佐伯さんの言葉に触れてほしい」と話す。

 A5判、166ページで600部発行。1500円(送料別)。購入希望者は電話か、実行委のツイッターアカウントにダイレクトメールで連絡する。中川さん☎090(2299)9107。(水川恭輔)

(2022年9月5日朝刊掲載)

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