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特定秘密保護法 一定の必要性/国会審議不足 中国地方の自治体反応

 特定秘密保護法をめぐり、中国地方の自治体からは6日、制定の必要性を一定に認める声が出る一方、特定秘密の規定があいまいな点や、十分に審議を尽くしたとはいえない与党の強引な国会運営に苦言や注文が相次いだ。地方の行政や市民生活への影響は見えないままで、特定秘密が広がらない仕組みづくりや慎重な法運用を求める声も聞かれた。

 島根県の溝口善兵衛知事は安全保障の面から「一定の必要性がある」と理解を示しつつも、衆参両院の委員会で採決を強行した与党の対応を疑問視。「早くから議論しないといけない」とし、審議不足との認識を示した。

 広島県の湯崎英彦知事は、4日と5日の参院審議で政府が新たに示したチェック機関に関する審議が不十分と指摘。「国民の知る権利にかかわる。恣意(しい)的に秘密が指定されることがない仕組みづくりを議論してほしい」と求めた。

 特定秘密の範囲や法律の具体的な運用方法は見えない。「市民生活への影響は分からない」と山口県の藤井哲男総合企画部長。岡山県の角田保彦危機管理監は「国の情報を注視したい」と語った。自治体側の萎縮で、情報公開や行政の透明性が後退する懸念もある。

 原発や米軍基地が立地する自治体には不安が漂う。米海兵隊岩国基地を抱える岩国市の杉岡匡総務部長は「国はもっと丁寧に説明する必要がある」とし、中国電力島根原発のある松江市の松浦正敬市長は「国民に『これが秘密だ』と分かるようにしないと民主主義国家としてどうなのか」と疑問を呈した。

 公安情報を扱い、特定秘密に関わる可能性が高い県警の幹部は慎重に言葉を選んだ。山口県警の内田和徳公安課次長は「警察庁から通知はなく、細かな運用について何も決まっていない」、広島県警の円石貞祐公安課次席は「どう運用するか判断できないためコメントできない」とした。

 「多くの人が不安を持っていることに政府は配慮するべきだ」と語るのは鳥取県の平井伸治知事。「情報公開が民主主義の基本であり、特定秘密が広がることはあってはならない。自治体はオープンで透明な組織であるべきで、情報公開を緩める考えはない。政府は慎重に法を運用し、国民は不断の監視をしていかないといけない」と強調した。

(2013年12月7日朝刊掲載)

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