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社説・コラム

『潮流』 平和を紡ぐ学び

■東広島総局長 岡本圭紀

 「教育は未来を変えるもの」。第30回ペスタロッチー教育賞に選ばれた歌手のMISIAさんが東広島市の広島大であった表彰式にオンラインで参加し、15年間取り組んできたアフリカでの教育支援活動を振り返った。

 スラムにある小学校に教材を贈り、現地も訪問して交流を深めた。小さかった子が大学生になり、日本に留学したこともあった。「教育は自分の意思で幸せを追求する力になる。私も現地の人やスタッフから多くを学ばせてもらった」と強調した。長崎県出身で、8月9日の平和学習が活動の原点だったと語っていた。

 東広島市では、8月6日が近づくと市内の小中学校の児童生徒代表が広島市中区の平和記念公園を訪れる「平和学習バス」が実施されている。1985年から続いており、例年は原爆資料館のピースボランティアの案内だったが、今年は賀茂高の生徒24人がガイドを担った。

 同校には、前身の賀茂高等女学校の生徒が被爆者の救護活動をした歴史がある。生徒は事前準備で学びを深め「遠い昔の出来事ではない」との思いを強めた。7月末のガイド当日、東広島市内の豪雨被災地と被爆前後の原爆ドームの写真を示し「災害は私たちが住む街をぐちゃぐちゃにする。原爆は一瞬でそれ以上に悲惨な状況にしてしまう」と説明した。

 市などは8月、市民文化センターの一角にある原爆被爆資料展示室をリニューアルした。そこには賀茂高生たちの感想も掲示されている。「被爆地には多くの人々の生活があったことを忘れてはいけない」「数え切れない歴史を感じた」と。

 学びの成果だろう。これこそ平和学習の力に違いない。被爆体験継承を誓う言葉に勇気をもらった。

 「平和や貧困、全ての問題はつながっている。学びは希望です」。MISIAさんの言葉をかみしめた。

(2022年9月6日朝刊掲載)

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