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首相補佐官の岸前防衛相 書面インタビュー 核兵器ない世界に尽力 NPT維持・強化は重要

 先の内閣改造で防衛相を退任し、核軍縮・不拡散問題を担う首相補佐官に就いた岸信夫氏が中国新聞の書面インタビューに応じた。「核兵器のない世界」の実現へ力を尽くすと強調。ロシアの反対で決裂した核拡散防止条約(NPT)再検討会議に関しては「核兵器国と非核兵器国が参加するNPTを維持・強化していくことが重要」とし、ロシアに建設的な役割を果たすよう求める考えを示した。

 岸氏は「唯一の戦争被爆国として、わが国が核軍縮・不拡散に取り組む重要性は変わりない」と基本姿勢を表明。核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の機運を一層高め、現実的で実践的な取り組みを粘り強く進める政府の考えを説明した上で「自分としても力を尽くす」と意欲を見せた。

 一方、核兵器禁止条約の批准や締約国会議へのオブザーバー参加には触れなかった。「現実を変えるためには核兵器国の協力が必要だが、条約には核兵器国は一カ国も参加していない」と指摘。核保有国を関与させるよう努力するとした。

 8月のNPT再検討会議については、決裂を「極めて遺憾」と受け止めながらも成果に目を向けた。核戦力の透明性向上など、岸田文雄首相が演説で提唱した行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」を代表例に挙げ「わが国の主張が多くの国から支持・評価を得て、最終文書案にも多く盛り込まれた」と評価した。

 来年5月に被爆地の広島市で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)に向けては「核兵器の惨禍を二度と起こさない、武力侵略は断固として拒否する、との力強いコミットメントを世界に示したい」と決意をにじませた。

 岸氏は安全保障も担当する。台湾周辺での中国軍の演習などで厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、防衛力の抜本的な強化や防衛費の増額の議論に積極的に参加する姿勢も示した。(中川雅晴)

記者のつぶやき

安保と平和 どう両立

 防衛相として、防衛力や米国の核抑止力の強化を唱えてきた岸氏。タカ派色が強かった安倍晋三元首相の実弟でもある。核軍縮・不拡散問題を担当する首相補佐官として官邸入りし、どう立ち振る舞うかに注目している。

 書面インタビューの回答で感じたのが、NPT体制の維持・強化への意欲だ。岸氏は「唯一の戦争被爆国として核軍縮・不拡散に取り組む重要性は変わりない」と強調。「核兵器のない世界」の実現に向けても「力を尽くす」と決意表明した。岸田文雄首相の見解に沿う内容だった。

 一方で、岸氏は台湾周辺での中国軍の演習などを挙げ、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさに危機感をにじませる。国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定が年末に迫る中、防衛相や外務副大臣としての経験を生かし、作業に積極的に参加する考えだ。安全保障と国際平和の議論をどう両立させるのか。手腕を見守りたい。(中川雅晴)

(2022年9月8日朝刊掲載)

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