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ヒロシマ「歴史語り継ぐ」 マンデラ氏死去 人柄・指導力しのぶ

 反アパルトヘイト(人種隔離)闘争を主導し、ノーベル平和賞を受賞した南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ元大統領(95)の訃報が届いた6日、広島県内の平和人権団体のメンバーやゆかりの人から悼む声が相次いだ。

 「柔らかな物腰が忘れられない」。広島大法学部非常勤講師の藤本義彦さん(南アフリカ政治)は1994年、大統領に就任直後の姿を思い返す。同国に留学中だった藤本さんは、日本から来たテレビ局の現地通訳として会った。

 中継中に電話回線が切れるトラブルにも、マンデラ氏は「技術に完璧はない」と待ち続けたという。藤本さんは「どんな人にも配慮を忘れない。人種や民族を超えた融和は彼だからこそ進められた偉業だ」とたたえた。

 広島国際文化財団が同国へ派遣した広島世界平和ミッションの一員として2004年春に同国を訪れた廿日市市の被爆者寺本貴司さん(78)は、マンデラ氏が服役した刑務所を見学。「心が折れることなく差別と闘い続け、民主化を実現した。偉大な歴史を語り継がなければ」と話した。

 「反差別の希望の象徴。生きざまは運動の支えだった」。人権擁護活動を続ける「アムネスティ・インターナショナル日本 ひろしまグループ」運営担当の野間伸次さん(51)も影響を受けた。

 マンデラ氏は、人種間の報復の連鎖を断ち切り、対話による国づくりに尽くした。広島県被団協(金子一士理事長)の大越和郎事務局長(73)は「差別という厚い壁を、世論に訴え掛ける粘り強い活動で乗り越えた」と高く評価する。

 もうひとつの県被団協の坪井直理事長(88)は「平和な国づくりを進める指導力は、核兵器廃絶に取り組む私たち被爆者の励みだった」と惜しんだ。

(2013年12月7日朝刊掲載)

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