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居森さん体験 絵本に 本川小で被爆 唯一の生存児童 6年生に読み聞かせ

交流重ねた元校長の奥原さん制作

 本川小(広島市中区)元校長の奥原球喜さん(76)=大阪市淀川区=が、前身の本川国民学校で被爆した児童で唯一助かった居森清子さん(2016年に82歳で死去)の体験を絵本にした。子どもたちに平和の大切さを語り続けた居森さんの遺志をくみ、8日、本川小で児童たちに読み聞かせた。(明知隼二)

 6年生だった居森さんは1945年8月6日、鉄筋校舎1階の靴脱ぎ場で同級生と被爆。爆心地に最も近い学校で、奇跡的に助かった。絵本は「本川をつたえて」。居森さんが目撃した惨状や、家族、友人を失い1人残された悲しみ、夫に支えられて被爆証言を続けた晩年を、奥原さんの文と、日本画の技法で描く。

 奥原さんは03~06年度に本川小の校長を務め、生前の居森さんと交流を重ねた。居森さんの経験を残したいと思い続け、昨夏に絵本の制作に着手。同小元PTA会長の田中八重子さん(72)=中区=への聞き取りを基に先月末に完成させ、自費出版した。

 この日、本川小を訪れて絵本を寄贈。教室で6年生たち約80人に読み聞かせ、時折涙ぐんだ。毎田希歩(のぞむ)さん(11)は「多くの人が亡くなったこの場で読んでもらい、原爆への関心が強まった」と感謝。奥原さんは「素直に受け止めてくれた。戦争や核兵器について考えるきっかけになればうれしい」と願っていた。

 絵本はカラー41ページ、1870円。市内の全141小学校に寄贈し、奥原さんのウェブサイトでも販売する。アドレスはhttps://www.muginohosha.com/

(2022年9月9日朝刊掲載)

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