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「黒い雨」 手帳申請却下 広島県・市 2件 11疾病確認できず

 広島原爆の投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」の被害者救済で、広島県と広島市が8月末までに、国が被爆者認定の要件とする11疾病を確認できないとして2件の被爆者健康手帳の交付申請を却下していたことが8日、分かった。国が4月に新たな認定基準を導入後、県内で11疾病を理由にした却下は初めて。

 新基準は、黒い雨に遭ったのを否定できず、がんや白内障など11疾病にかかっているか、白内障の手術歴があれば、被爆者と認める内容。うち疾病要件で、県がまず7月に1件、続いて市が8月に1件の手帳交付申請を却下した。いずれも書面や電話で申請者へ複数回にわたり診断書の必要性などを伝えたが、提出されなかったという。

 救済を求める訴訟で原告団長を務めた「黒い雨被害者を支援する会」の高野正明さん(84)=佐伯区=は「施設入所者が病院に出向けず、診断書を入手できないケースもある。県と市はできるだけサポートをしてほしい」と要望している。

 訴訟の広島高裁判決が確定した昨年7月から今年8月末までに県と市にあった申請は3312件で、うち手帳交付済みは1554件。却下は黒い雨に遭ったと確認できなかったケースを含めて計5件となった。審査中の死亡も33件確認されている。(明知隼二)

(2022年9月9日朝刊掲載)

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