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連載・特集

『生きて』 NPO法人「食べて語ろう会」理事長 中本忠子さん(1934年~) <11> NPO法人化

新たに拠点 支援広がる

  ≪2015年に「食べて語ろう会」をNPO法人化した≫

 私も高齢になったし、誰か代わりにやってくれる人がおらんじゃろうかって思ってね。NPOにして7年たった今でも、給料もないんじゃけ、なかなか難しいよね。これまでは私個人で30年近くやってきて、夜中にでも助けてコールをもらったら、すぐに動いた。でももう今はコールが来てもすぐには動けん。NPOでは何かと理事会で決める必要があるし、私も年じゃし。

 でもすぐに動けんかったら、その間に事件が起きてしまうかもしれん。例えば最近も「今ここに薬がある。やりたいんよ」という電話があった。止めてもらいたいけん連絡してくるんだと思う。飛んでいって止めてやりたいんよ。

 行政に何か頼んでも時間がかかるでしょ。今日は土曜だから日曜だからというのは困っている人には関係ない。子どもの方も「ばっちゃん、もうええわ」ってなる。助けてコールにはすぐに応じるようにしときたいと思ってる。

 ≪16年12月、自宅近くに活動拠点「基町の家」を設け、少年たちに食事を提供するようになった≫

 広島市が空き店舗を貸してくれた。最初は1区画だけだったけれど、相談場所が足りなくて19年には2区画になった。広げたおかげで学習スペースができ、週1回学習支援の会を開いている。ボランティアが続けて来てくれて助かるよ。いつでもいろんな人が来られるようになったのは良かったけど、もう少し子どもがくつろげるような場所にしたいという思いもある。人に会うのが苦手な子もおって、そういう時はやっぱりうちに来るようになる。まだちょっと、手狭よね。

 NPO法人になって基町の家ができてからは、市内のJAの直売所が農家から野菜を集めてくれて、旬のおいしい食材を週に2回ほど譲ってくれるんです。卵は佐賀と神奈川県から決まって8ケースずつ、米は高知や福島県などいろんなところから届く。週1回、注文した食材を提供してくれる団体もある。うちは全て無料で食事を振る舞うけん、ありがたいよね。おかげで子どもが大好きな分厚い卵のオムライスができるよ。

(2022年9月13日朝刊掲載)

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