×

ニュース

核禁条約は軍縮体制の一角 第1回締約国会議クメント議長に聞く

 6月にあった核兵器禁止条約の第1回締約国会議で議長を務めたオーストリア外務省のクメント軍縮局長が、8月に米ニューヨークの国連本部で核拡散防止条約(NPT)再検討会議に出席し、中国新聞のインタビューに応じた。禁止条約は「軍縮・不拡散体制の一角」との認識を表明。否定的な態度を取り続けてきた核兵器保有国も意識せざるを得ず、非保有国との溝は「狭まった」と見立てた。

 核兵器を全面的に違法化した禁止条約が昨年1月に発効後、保有国と非保有国が一堂に会した初の再検討会議。討議では、禁止条約を推進する立場からNPTと補い合う関係などを説いた非保有国に対し、保有国は反発した。クメント氏は依然として双方の間に溝が残るのを認めつつ、「禁止条約を否定することはますます難しくなっている」と指摘した。

 その理由について、禁止条約の発効や締約国会議の開催を挙げて「条約は今や国際法や軍縮・不拡散体制の一角を占め、どう運用するかも明示できている」と強調。保有国は反感を示す一方で、無視しきれなくなっているとの見解を示した。

 また再検討会議では、核兵器がもたらす影響の議論が不十分だったと受け止めた。「核兵器が人々や地域に与える具体的な影響をもっと語り合わなければならない」と主張。2014年に訪れた広島と長崎で被爆者と交流した実体験を踏まえて「個々の体験を聞くと、対話の内容も変わる」とし、被爆地や核実験の被害地の存在意義を唱えた。

 ほかに核抑止と安全保障を巡る議論や、市民社会の参加の重要性も訴えた。(小林可奈)

(2022年9月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ