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連載・特集

『生きて』 NPO法人「食べて語ろう会」理事長 中本忠子さん(1934年~) <13> 自立準備ホーム

出所後の暮らし支える

  ≪食べて語ろう会は2019年5月、少年院や刑務所を出所後、帰るところのない人を受け入れる自立準備ホームをマンションの一室に設けた≫

 出所後、子どもの受け入れを拒否する親がおるし、地元には戻りたくない子もおる。そうしたら帰ってくる時に不安でしょう。ここでご飯を食べさせるだけでは、生活全般が見られんもんね。夜も過ごせる場所を確保して更生を支えようと始めたん。刑務所から帰ってきた人とも駆け引きなしに付き合いたいんよ。

 定員は1人で、これまでに男女4人が入所した。スタッフが基町の家とマンションを行き来して、入所した人と昼夜のご飯を一緒に食べる。家庭的な雰囲気の中で寄り添いながら自立につなげたいと思う。

 やってみて分かったことは引き受ける側の勉強が大事だということ。人間関係って、いきなり築けるものではなくて長い年月がかかる。ホームの入所期間には限りがあるけん、こっちは結果を出そうと焦る。けれど非行は長い日々の積み重ねじゃからね、数カ月で直るわけがない。とことん話を聞いて親身になってあげんといけんけど、これがなかなかできん。私も大いに反省するところがある。

 ≪3月、全国の約40団体と連携して日本自立準備ホーム協議会(名古屋市)を設立し、顧問に就いた≫

 私が言い出しっぺで、協議会設立までに7年かかった。自立準備ホームは全国に約400軒ある。協議会に参加したのはまだ、全体の10分の1。もっと広げたい。ホームは保護観察所から入居者を委託される。団体同士、お互いに情報交換して運営を軌道に乗せ、安定して受け入れられるようにしたい。

 以前、私が面倒を見ていた子が少年院を出た後、広島の家族が引き受けてくれないので県外で知人に預かってもらった。知らない土地だったけれど、就職先の雇い主も本当によくしてくれて、立派に稼げるようになった。

 全国の団体や人とつながりを持てば、地元で暮らせない人も紹介し合える。支援する側の人材育成も連携してやればより充実するでしょう。横の連携を強めてやっていきたいですね。

(2022年9月15日朝刊掲載)

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