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岩国市長が受け入れ表明 米給油機の先行移転

 山口県岩国市の福田良彦市長は9日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のKC130空中給油機を、来年夏に米海兵隊岩国基地へ先行移転させる政府方針を受け入れる考えを市議会全員協議会で表明した。日米両政府が普天間飛行場の全面返還に合意して以降、所属部隊が本土に移る初のケースとなる。

 福田市長は、沖縄の負担軽減や議員の意見などを踏まえた「総合的な判断」として「15機が来年6月から9月までの間に移転することについて認める」などと述べた。また、給油機移転の前提としてきた普天間飛行場移設の見通しについては「不透明な状況」との認識を示した。

 空中給油機移転は1996年の日米特別行動委員会(SACO)で合意。市は97年に移転を容認しているが、「普天間移設の見通しが立たないうちの先行移転は認められない」との基本姿勢を取ってきた。福田市長は協議会後の取材で、従来の市のスタンスを「変わっていない。国はしっかり尊重してほしい」と強調しつつも「普天間移設の見通し」を移転条件にしない考えを示した。市は今後、山口県と協議した上で国に判断を伝える。

 県の藤部秀則副知事はこの日、「(市長の決断を)しっかり受け止める必要がある」と記者団に語った。

 国は10月末、容認当初より3機増えた15機の来夏移転を市と県に要請した。福田市長は11月中旬に沖縄県を訪ね、仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事、宜野湾市の佐喜真淳市長と会談。普天間飛行場も視察し「沖縄の負担軽減を目に見える形で進めたい」とする政府の姿勢に理解を示していた。(野田華奈子)

【解説】沖縄に理解、現実的判断

 福田良彦岩国市長が、KC130空中給油機移転の政府方針を受け入れた。先行移転を認めない姿勢は保ちつつ、判断は現実的だった。過去に容認していた背景や市議会保守系議員の前向きな受け止めもあり、結論は早くから見えていた。

 「普天間飛行場の全面返還に向けた沖縄の理解が得られるよう最大限の努力を」。福田市長は市議会全員協議会で政府にこう注文した。過大な基地負担に苦しむ沖縄と、沖縄県名護市辺野古沖への普天間移設を進めたい政府。双方に理解を示す一方、来夏までに普天間問題の見通しが立てば先行移転には当たらないとの理屈も潜む。

 前面に押し出された「沖縄の負担軽減」の裏で、地元での判断材料が十分だったかは疑問だ。移転による影響などを尋ねた国への照会結果も、米軍の運用の詳細に関わるとの理由から明確な回答のない項目が目立った。

 議員からは、沖縄の基地負担を全国で議論する提案もある。岩国が先陣を切るのであれば、より具体的な安全安心対策や地域振興策を求めていくべきだ。今こそ市の将来像を目に見える形で示してほしい。市民も無関心であってはならない。(野田華奈子)

(2013年12月10日朝刊掲載)

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