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連載・特集

『生きて』 NPO法人「食べて語ろう会」理事長 中本忠子さん(1934年~) <14> 家族

三男夫婦 里子受け入れ

  ≪今は1人暮らし。息子が3人、孫は8人いて、ひ孫も4人いる≫

 孫はほとんど成人しとります。中学校の先生をしとる子もいるんです。子どもや孫からの相談には乗るけど口出しはしない。余計なこと言ったら、責任とらにゃいけんじゃない。まあ、孫が小遣いがいる時に電話してくるくらいよ。心配をかけるような子がおらんことは非常に幸せよね。

 孫の1人、三男の善範が育てている大学生の男の子は、中学生の時に児童相談所から引き受けた里子なんよ。その子の成長は本当にうれしい。

 ≪里子を受け入れる時には、善範さんから相談を受けた≫

 善範夫婦は私の影響を受けて里親になろうと思ったんだろうけど、うちはご飯を食べさせたら終わり。でも里親は365日、四六時中ずっと一緒でしょう。少し心配してたの。口出しするまいと思っていたけど、息子から「どうしよう」って電話があった時には「親は子どもを選んじゃいけん」って言ってた。だから、3人が仲良くしている姿を見ると安心するよ。

 里子としてきたこの子は、実の親から甘えさせてもらえてなかったみたい。最初は人を信じられないところがあったんだけど、みるみる変わった。当初は勉強が遅れがちだったけど、放課後に先生が補習してくれるうちに成績も上がってね。部活でバレーボールを始めて、高校でも厳しい練習に耐えたんよ。街なかの高校に通ったけど、遊び歩くようなこともなく真面目。最近はおしゃれに目覚めたみたいで洋服をようけ買っとるみたいじゃけど、大学生活にアルバイト、ジム通いと何かと忙しいみたい。

 以前この子が書いた作文に「大人は無理につらい過去を聞いてあげようとするが、子どもは楽しくたわいない話ができる人を求めている」とあった。善範夫婦はこれができたんじゃろう。結果的に引き受けてよかった。だいたい私は過去の経歴で人を判断するのが嫌い。嫁さんも同じ考え。それが子どもに伝わるんよね。今はさらにもう1人、4歳の子も育てている。善範夫婦は里子たちに人生勉強させてもらっとる。

(2022年9月16日朝刊掲載)

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