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日独2ヵ国語で被爆証言集 福山のNPO 元事務局長、米澤さんの体験 冊子に

広島サミットへ英語版も計画

 NPO法人「日独平和フォーラム」(福山市)の元事務局長山本健治さん(78)が、証言活動を続ける被爆者の米澤鉄志さん(88)=京都府宇治市=の体験を冊子にまとめた。日本語とドイツ語で記している。広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる来年5月までに英語版も発行する計画。「核兵器がどんな恐ろしい結果をもたらすか多くの人に知ってほしい」との思いを込める。(東海右佐衛門直柄)

 表題は「米澤鉄志さんの被爆体験と叫び」。聞き取った証言を中心に、米澤さんの著書も一部参考にして編集した。ドイツ語は、現地在住の田口理穂さんらが翻訳した。山本さんは英語版の作成も進めている。

 米澤さんはあの日、疎開先から広島市の祖父母の家に向かう路面電車内で母親とともに被爆した。場所は現在の中区胡町かいわい。爆心地から約750メートルだった。車外に飛び出し「地獄を逃げ惑うしかなかった」という。黒焦げの赤ん坊を抱いて死んだ女性や、体全体にやけどを負った女学生たちの姿を克明に証言する。

 翌月、母親は高熱を出して死去。母乳を飲んでいた妹も亡くなった。米澤さんは高熱が続いた後に奇跡的に回復する。冊子には、核兵器廃絶を願って被爆証言を始めた経緯などがつづられている。

 山本さんは、友人の米澤さんの活動に感銘を受け、体験をドイツでも広めたいと冊子を作成。来年、広島市とハノーバー市の姉妹都市40年の式典に米澤さんが招かれており、山本さんも同行して、冊子を活用しながら思いを伝える手伝いができないか検討している。

 冊子はA4判、97ページ。原爆資料館の情報資料室などで閲覧できる。希望者に1部千円(郵送料は別に310円)で分ける。名前、住所、電話番号を記しファクスで申し込む。ファクス06(6327)7986。

(2022年9月16日朝刊掲載)

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