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パキスタン洪水被害に支援を 国際組織現地支部長 ハイダーさんに聞く

学校再建急ぐ/気候変動問題も訴え

 パキスタンが記録的豪雨により未曽有の被害を受けている。「多くの人が家を追われ、命に関わる状況にいる。広島からも関心を寄せてほしい」。首都イスラマバードを拠点に学校教育支援に携わり、ヒロシマを伝える紙芝居の活用にも取り組むショアイブ・ハイダーさん(53)にオンラインで聞いた。(金崎由美)

 同国政府や国連人道問題調整室(OCHA)によると、雨期の6月以降に3300万人が被災し約1400人が死亡。住居170万戸以上が全半壊した。道路は6700キロが寸断されて物資輸送も滞り、食糧不足は全土に及ぶ恐れがある。衛生環境は劣悪で、農業も壊滅状態だ。

 「国土の3分の1が浸水した」。今月12日、ハイダーさんが厳しい表情で説明してくれた。オーストリアの国際協力組織「HOPE’87」のパキスタン支部長を務める。

 HOPEは広島市中区のNPO法人「ANT―Hiroshima」の支援を受けて2011年、同国北西部のアフガン難民キャンプ近くに診療所を開設。難民や貧困層の現地住民を診察している。現在、小学校をはじめ約3千校を対象に、教育環境の向上や職業訓練に力を入れる。

 豪雨により国内1万8千以上の学校が被災した。同国南部に次いで北西部も被害は甚大だ。HOPEが支援するデーラー・イスマーイール・ハーン市の小学校は8月下旬、雨が降っていないのに、降雨域から川の水が押し寄せて損壊したという。HOPEは3千校の被害状況を調べ、被災した学校の早期再開を目指している。「子どもにとって家や水、食糧と同様に学校は必要だと信じる」

 ハイダーさんはANTの渡部朋子理事長(68)を通して被爆樹木が主人公の紙芝居や絵本を入手し、「原爆被害とその後の希望を子どもに伝えよう」と学校で広めている。19年には広島を訪れた。災害に直面する今も、特に女子教育の機会が限られる同国で、子どもが教育を受ける権利を懸命に守ろうとしている。

 パキスタン政府と国連機関や非政府組織(NGO)が救援活動を進めているが「まだ『大河の一滴』だ。広島から日本政府に支援の働きかけを」とハイダーさん。洪水被害と同国北部の氷河決壊との関係も指摘し、「先進国が排出した温室効果ガスの影響を途上国が受けている。地球温暖化の不公正さを、世界がわがことと捉えるべきだ」と言葉を継いだ。

 渡部さんは「来年広島市である先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、気候変動問題は避けて通れない。私たちの問題として支援したい」と、HOPEへの寄付を郵便振替で受け付けている。口座番号01300―8―90360 口座名「NPO法人ANT―Hiroshima」。パキスタン洪水支援と明記する。☎082(502)6304。

(2022年9月20日朝刊掲載)

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