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連載・特集

『生きて』 NPO法人「食べて語ろう会」理事長 中本忠子さん(1934年~) <15> コロナ禍で

子どもの話を聞きたい

  ≪2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大で支援の形を変えざるを得なくなった≫

 感染防止のため、大人数が集まって食べてもらうのが難しくなった。ほとんどを持ち帰り弁当に変えたんです。親が病気がちだったり、子どもに気が回らなかったりして食事を作れない家庭のため。スタッフ3~4人が、1日に50~70個作るんよ。

 配布先には生活が苦しい大人もいる。福祉施設や行政がうちを紹介してくることもあるんよ。一方で最近は小中学生があまり来なくなった。そろそろここでご飯を食べてもらいたいね。子どもたちの話を聞いてあげたいよ。

 ≪関わった子どもたちとは何年、何十年も連絡を取り続ける≫

 みんなとの縁は切れん。どの子も成長を見届けたい。電話ではしょっちゅう話してるよ。子どもたちにはいろんな人生があって、こういう生き方もあるんじゃって私も勉強になるんよ。広島を離れていても、帰省して「ご飯食べさせて」って訪ねてくる子もたくさんおる。

 毎年母の日や敬老の日、誕生日にはたくさんのプレゼントが届く。前はエプロンやバッグが多かったんじゃけど、最近はつえが増えたね。今年3月に88歳の米寿を迎えたんだけど、40年前、最初にご飯を食べさせた子もやっぱりつえを贈ってくれた。

 ≪自身もスタッフも高齢になり、一緒に活動する仲間を募っている≫

 ご飯を作ってくれるボランティアに来てほしい。「目配り、気配り、心配り」のできる人がいいね。それから将来的には、自立準備ホームの部屋数を増やして預かれる人数を多くしたい。ホームを一緒に運営してくれる人も必要じゃね。

 興味や関心だけではボランティアを続けるのは難しいよね。私たちの世代は戦争を経験し、戦後の苦しさを味わった。自分が食べられなくても、わが子には十分食べさせたい。ばっちゃんって慕ってきてくれる子は私にとってはみんなわが子。この気持ちは、ずっと変わらんよ。=おわり (この連載は報道センター社会担当・赤江裕紀が担当しました)

(2022年9月17日朝刊掲載)

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