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森下洋子 人間賛歌の舞 「くるみ割り人形」 全国公演19日開始 平和への祈り 強く表現

 広島市中区出身のプリマバレリーナ森下洋子(73)が団長を務める松山バレエ団(東京)は19日、名作「くるみ割り人形」の全国公演をスタートする。森下は全8公演のうち東京と大阪で披露する全幕公演の舞台に立ち、長年親しんだ主役の少女クララを演じる。作品のテーマとする「出会いの喜びと別れの切なさ」を描き出そうと、意欲は衰えない。(木原由維)

 チャイコフスキーの三大バレエ音楽の一つで、クリスマスの夜を舞台にした物語。王子が魔法により不格好な人形と化すが、クララはその外見に隠れた「魂の輝き」に気付く。松山バレエ団は1982年に初演してから40年になる。森下の夫で総代表の清水哲太郎が演出・振り付けを担当。世相とともに改定を重ね、観客に愛されてきた。

 生と死がテーマの人間賛歌でもある。人形を抱いて眠りについたクララは、夢の中のうたげが終わり去っていく人々を懸命に引き留めようとする。森下は「愛する人との別れに慟哭(どうこく)するシーンは唯一無二」と思い入れを語る。

 原爆投下から3年後の広島に生まれ、バレエを通じ「世界中の人に平和の尊さを届ける」ことを使命に踊ってきた。ロシアの侵攻を受けるウクライナの子どもたちをニュースで目にするたび、胸が痛む。「バレエの世界を夢見る少年少女たちが踊ることもできない状況にある。苦難にある踊り手たちを思い、精いっぱい演じたい」

 どんな時も前を向き勇気と希望を与えるクララに命を吹き込もうと、稽古を続ける。「笑顔で生きていることに感謝の思いを込めたい」と本番のステージを見据える。

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 公演日と会場は次の通り。

 19日=新宿文化センター(東京)▽10月8日=北とぴあ(同)▽10日=さいたま市文化センター(埼玉)▽11月23日=大阪・フェスティバルホール(全幕、森下主演)▽12月4日=府中の森芸術劇場(東京)▽10日=東京文化会館▽11日=同(全幕、森下主演)。12月10日は2回公演。チケットなどの問い合わせは松山バレエ団☎03(3408)7939。

(2022年9月17日朝刊掲載)

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